2023.01.31
最新スマートシティ動向 世界はここまで進んだ!
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「スマートシティ」という言葉を耳にする機会が増えてきました。スマートシティへの取組みは、現在国を挙げて推進中で、ICT(情報通信技術)をはじめとする先端技術をまちづくりに活かす流れが活発になっています。ここでは、まずスマートシティとはどのようなものであるかを押さえた上で、一歩先を行く世界の先進事例についてご紹介します。日本の現状についても触れています。
スマートシティとは?
2021年4月に内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省が合同でとりまとめた「スマートシティガイドブック」では、スマートシティとは「ICT等の新技術や官民各種のデータを活用した市民一人一人に寄り添ったサービスの提供や、 各種分野におけるマネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化等により、都市や地域が抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける持続可能な都市や地域であり、Society5.0の先行的な実現の場である」と定義されています。
もう少しわかりやすく言い換えるなら、ICTやAIなどの先端技術を用いて都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化し、さまざまな課題を解決して、生活者や企業の利便性・快適性向上を目指す都市や地域のことだと言えるでしょうか。
スマートシティでは、センサーやカメラを地域内に張り巡らすなどしてデータを収集し、統合してAIで分析。必要に応じて設備・機器を遠隔制御することで、インフラ・施設・運営業務を最適化していきます。具体的には、エネルギー管理、治安維持、高齢者や子どもの見守り、交通渋滞解消、災害対策などの課題の解決が期待されています。
スマートシティの対象は、都市ばかりではなく、里山里海などを有する地域での取組みを含みます。豊かな自然と共生した地域づくり「スマートローカル」も、スマートシティのひとつの形です。ICTをはじめとする先端技術をまちづくりに取り入れ、さまざまな地域においてスマートシティの取組みが進むことが望まれています。
世界で進むスマートシティへの取組み
スマートシティの取組みは、2000年代のヨーロッパで始まりました。その後20年で世界各地に広まるとともに、それぞれの地域の特性に合った形で成果を出しつつあります。世界の都市におけるスマートシティの事例を見てみましょう。
スペイン・バルセロナ
バルセロナのスマートシティ化は、2000年に始まりました。取組みからすでに20年以上が経過した現在、多くの社会インフラが「センティーロ(Sentilo)」と呼ばれる統合システムに接続し、行政の効率化や市民サービスの向上に役立てられています。
街中にセンサーやカメラが設置され、集めたデータはすべて「センティーロ」で一元管理。市役所の各部門や関連業者は「センティーロ」の情報を参照して対応するほか、多くの公共サービスが自動化されるなど、効率化が進んでいます。
スマートシティ化の具体的な施策は次のとおりです。
- 路上に敷設された駐車センサーで車道の駐車スペースを管理。駐車状況は「センティーロ」に集約され、市民はアプリなどで確認できる。係員による駐車違反のチェックは不要に。
- 主要道路の交通取り締まりは、常設のスピードセンサーとカメラで自動化。
- スピードセンサーと信号機の連動で、制限速度を超えた走行を感知すると次の信号が赤に。
- すべてのゴミ箱にセンサーを設置し、満杯のゴミ箱を優先して回収。
- 公園や街路樹の散水栓や噴水は、センサーが気温や湿度を感知して自動制御。
- 街灯の点灯時間や照度は、センサーが感知した明るさや通行量に治安情報を加味して最適化。
さらに出色なのは、地下鉄やバスといった市の公共交通を中心に、視覚障害者向けサービス「ナビレンス(NaviLens)」が採用されていることでしょう。「ナビレンス」は、視覚障害者の人々の自立歩行支援を目的に開発されたスペイン発祥のサービスで、情報が埋め込まれたタグ(QRコードに似た四角形の図柄)とそれを読み取るアプリからなります。
タグは、現在位置の状況や周辺情報などの情報が埋め込まれたもので、施設内の壁や柱に貼って使用します。スマートフォンでアプリを起動し宙にかざすと、アプリがタグをキャッチして埋め込まれた情報を音声で知らせてくれる、という仕組みです。スマートフォンを宙にかざしながら歩くと、次々に必要な情報を音声で読み上げてくれるため、目的地までの移動が容易になる画期的なサービスです。

Sentilo構成図(Sentiloホームページより引用)
シンガポール
シンガポールは、世界のスマートシティランキング「IMD Smart City Index」3年連続1位。まぎれもないスマートシティ先進国です。2014年に「スマートネーション(Smart Nation)」構想を発表し、スマート国家を目指してきました。特に重要な分野として、都市生活、交通、健康、電子政府、企業・ビジネス支援の5つをあげて注力し、国を挙げてスマートシティ化プロジェクトを進めています。
シンガポールの特徴のひとつは、行政サービスを中心にデジタル化をしていることでしょう。出生届を例に挙げると、モバイルデバイスから届出ができ、子ども誕生のボーナスを国から受け取ることまで一連の流れとして可能になっています。役所に出向く必要はなく、スマートフォンひとつで完了できる簡便さで、市民は自然にスマートシティの仕組みに乗って恩恵を受けることができるのです。
また、国を丸ごとデジタルツイン化するプロジェクト「バーチャル・シンガポール」も、世界初の試みで大変話題になりました。これは、地形や建築建造物、交通機関など、国土に存在するすべてを3Dデータ化し、本物そっくりの都市を仮想空間上に再現(デジタルツイン化)するもので、そこにはさらに、リアルタイムのデータとして人や車の位置情報が加わります。現実空間では困難なシミュレーションも「バーチャル・シンガポール」では容易で、新たな政策やまちづくりに役立てられています。
バーチャル・シンガポール(GeospatialSGホームページより引用)
中国・杭州市
中国では、2000年代後半から、国家レベルでスマートシティの取組みが始まりました。中でも杭州市は、同市に本社を置くアリババが主体となって開発したクラウド型デジタルプラットフォーム「シティブレイン」を採用し、スマートシティ化で成果を上げています。
杭州市では、渋滞などの交通問題が深刻でしたが、現在ではライブカメラの映像をAIがリアルタイムで分析し、信号機を切替操作して渋滞緩和を図っています。事故発生時の警察への自動通報システムも確立しています。
スマートシティ化の技術は、新型コロナウイルスの感染対策にも応用されました。アリババが開発したアプリ「健康コード」は、政府が保有するビッグデータと照合して健康状態を3段階で表示。いわゆるデジタル健康証明書として通用します。地下鉄やバスなど公共交通機関や宿泊施設、商業施設では、読み取り機にアプリのQRコードを提示しないと利用できない仕組みになっており、感染防止に大きな役割を果たしています。
日本の現状
翻って日本のスマートシティ化の状況を見ると、世界から後れを取っていることは明らかで、スマートシティランキング「IMD Smart City Index 2021」の順位でも、東京84位、大阪86位と低迷しています。高いレベルの技術を持ちながら、それが人々の生活の利便性や快適性に貢献するまでには至っていないということでしょうか。
政府はスマートシティ化を強く推進中で、官民が連携してスマートシティの実現に向けて加速する気配は見えてきています。三井不動産などが共同運営者として携わる千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」、ソフトバンクと東急不動産の共創による街づくりで、東京都港区竹芝の街全体で最先端技術を活用する「Smart City Takeshiba」、トヨタ自動車が静岡県裾野市に建設中の「Woven City」など、さまざまな規模で展開しています。
地方での動きも見逃せません。2021年、国は「デジタル田園都市国家構想」を打ち出し、地方からデジタルの実装を進めて地方活性化を目指す取組みを始めています。それぞれの地域の実情に合わせて、デジタルの効果を実感できる分野から進めていくとのことですが、スマートシティ・スマートローカルと重なりの多い施策でもあり、今後の展開が期待されます。
まとめ
ICTをはじめとする先端技術をまちづくりに取り入れるスマートシティ化の流れは、国の後押しもあり、今後日本においても進んでいくのではないでしょうか。世界に大きく出遅れた感はありますが、各国の先行事例を参考にしながら、地域に合わせたスマート化を進めていきたいものです。